【italiazuki】フリウリの燻製生ハム「プロシュット・ディ・サウリス I.G.P.」
フリウリの燻製生ハム「プロシュット・ディ・サウリス I.G.P.」(2018/08/01)
サウリス産プロシュットI.G.P. (Prosciutto di Sauris I.G.P.) は、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリアの北部、峡谷ともいえるサウリス村でつくられる希少なプロシュットだ。標高1200mに位置する稀有な場所で製造されており、原産地呼称のI.G.P.認定とはいえ、その生産者はたったの2社のみ。
標高1200mの自然に囲まれた地域にてこのプロシュットが生まれる。
土地的な歴史から、長くドイツの文化の影響を受け、また長く厳しい冬を越さなければならない故から生まれた、世紀を超えたこの土地ならではの生産物といえる。
さて、この土地に行き着くまでには、結構な山道をクネクネと車で登っていく必要がある。途中、岩を切り出しただけのようなトンネルをいくつか抜けると…
目の覚めるようなエメラルドグリーンの大きなサウリス湖に出る。
サウリス村の入り口、サウリス湖。水面の色が非常に特殊‼︎
これは、戦時中にドイツ軍により捕虜となったニュージーランド人たちの現場での働きによりできあがったものだとか。
どこまでも奥へ奥へと続く峡谷のような風景と、深さを感じるブルー/グリーン、そしてその歴史を考えながら水面を見ていると、まるで吸い込まれるのではないか、という錯覚に陥るようだ。
ここで1862年創業のプロシュットフィーチョ「WOLF (ヴォルフ)」を訪ねる。会社名の「WOLF」は創業家族の屋号。人口約400人ほどの小さなこの村は、そのほぼ全ての家が「Petris (ペトリス)」という苗字を持つ。そのため、お互いを区別するために屋号を用いるのが常となっている。
原料となる豚は、北イタリアを中心として飼育されたものを使用する。腿肉の形となって納品される肉には、塩、胡椒、ニンニクがすりこまれ、数日間置いたのち、塩をはずし、温度と湿度のコントロールされた保管庫にてしばらくおかれる。
その後、サウリス産プロシュット独特の工程である「アッフミカトゥーラ」に入る。いわゆる燻製だ。
燻製に使われる木はブナと決められているが、ブナの燻煙は適度に柔らかく、甘みを帯びるほど良さを持ちあわせているので、同製品に適する唯一の木材とされている。
ひんやりとした燻製室。室内にほのかな煙が充満している。
サウリスのハム類の特色をつくるブナの木の炊き場にて。同社を支えるクリスティアンさん
同社の燻製室は肉の保管・熟成庫のある階下に位置し、ここに並ぶいくつかの炊き場からあがる煙は直接燻製室へつながっている。
煙が直接つながる上階の燻製室は低温庫となっているため、燻製はいわゆる冷燻となる。燻製期間は3日間。ここでほどよい燻製臭が肉にまわり、独特の風味を生みだすこととなる。
製品として出荷可能な状態。見ているだけでどことなく燻製香がしてきそうだ
その後は熟成室へ。ここでゆっくりゆっくりと熟成が進み、14ヶ月に達した際に品質がコントロールされる。合格したものは、焼印が押され、ようやく「プロシュット・ディ・サウリスI.G.P.」として認められ、市場に出荷できる態勢となる。
このプロシュットの味わいの特徴としては、旨みや甘みがほどよく、脂が全体にうまくのっていること。(I.G.P.の認定の焼印がされるのは、14ヶ月経過時に検査に合格したもののみ)ナッツのような脂と旨みが相互する非常にまろやかさが他地でのプロシュットと一線を画す。薄くスライスしていただくそれは、もちろん食する部位にもよるが、下に残るほどよい塩気は、なんとも北の山奥でつくられる力強さを感じさせる。
そして、これには、しっかりとした味わいを持つ土着品種のフリウラーノを合わせたいところだ。
スライスしたプロシュット。奥はこれも同社の看板商品、スペック。
出荷の際には同社のブランドがかけられる。
同社では、特に18ヶ月熟成に達したものを、「ノンノ・ベッピ」として、ラインナップしている。その熟成した旨みをさらに特徴としたものも同社自慢の一品だ。
そして、同様に同社の看板製品でもあるスペックも合わせて味わうべきもの。
同社売店にて。その場でスライスもしてもらえる。