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特産物と伝統料理

イタリアの他地区と同様、この地域の置かれている位置、地形、歴史、そして文化の影響を深く受けています。隣接するヴェネト州の料理と似ている部分も多いですが、特徴的なのは、オーストリアの食文化も非常に色濃く根づいています。

生産物

サンダニエーレ産生ハムDOP (プロシュット・ディ・サンダニエーレ/Prosciutto di San Daniele)

標高約300mの地域に位置するサンダニエーレの山からの吹き下ろす清澄な空気の流れと季節の織りなす気候、そしてその生ハム製造の技術との取り合わにより、この土地ならではの生ハム製造が行われています。1年以上の熟成期間をおいたそれは、肉と熟成香の凝縮した風味とそこからくる独特の甘みとうまみが特徴です。プロシュットには、豚の後腿肉を使用しますが、サンダニエーレ産のものは、豚の蹄がついていることも見た目の特徴となっています。
また、原産地名称保護DOP(デノミナツィオーネ・ディ・オリージネ・プロテッタ/Denominazione di Origine Protetta)に指定され、厳しい品質管理により製品は保護されています。

サウリス産生ハム IGP (プロシュット・ディ・サウリス/Prosciutto di Sauris)

サウリスの生ハムは、高原地帯であるカルニア地方の特産です。サウリスは標高約1200mに位置し、人口はたったの400人強の小さな一画です。周囲を山に囲まれた非常に特殊な地区ですが、ここで生産される生ハムは口にとろけるように甘く、旨味が十分。最低でも16ヶ月間の熟成を要する逸品です。ここでは、低温燻製のハムであるスペックの美味しさも必ずや味わうべき価値あるものです。

モンタージオチーズ (フォルマッジョ・モンタージオ/Formaggio Montasio)

同州の北平野部から高原地帯にかけて(現在は平野部でも製造)つくられる伝統的なチーズです。同地域の自然に恵まれた環境で育った乳牛からの乳からできる大型の熟成タイプのチーズです。2-5ヶ月の若いものは「フレスコ」、12ヶ月熟成の「メッザーノ」、それ以上、数年をかけて熟成されたものは、「ストラヴェッキオ」と呼ばれ、それぞれに味わいの違いがあります。この地域の伝統料理であるフリコ(Frico)には、このチーズを使います。

ローザ・ディ・ゴリツィア (Rosa di Gorizia)

イタリア北部で栽培されるチコリの仲間の野菜でラディッキオがあります。ヴェネト州で大変に有名な品種がいくつかありますが、フリウリ産の特殊なラディッキオです。
「ゴリツィアのバラ(=ローザ)」と呼ばれるこの品種は、見た目がまさしくバラの花のような美しさ。生産者もごく少数で、出回りも少なく希少な地元野菜で大変高価な野菜ですが、イタリア国内の有名・著名シェフから直接引き合いのあるほどに希少価値の高いものです。
冬の時期にこの地を訪れ、レストランなどで見かけたらぜひ食していただきたい食材のひとつです。

伝統料理・伝統菓子

土地の伝統料理のことをピアット・ティピコといいます。
フリウリに伝わるそれらは、いわゆる「ピアット・ポーヴェロ(貧しい料理)」と言われ、その土地で生産される食材を飾り気なく日常使いする素朴なものが多いのが特徴です。

フリコ(Frico)

同州を最も代表する料理といえます。
大きく分けて2種のフリコがあります。ひとつは「フリアービレ(=壊れやすい)」と言われ、おろした熟成したチーズを熱したフライパンの上で薄くガレットのように焼き上げます。
もうひとつ、「モルビド(=柔らかい)」と呼ばれるものは、ジャガイモをベースに、チーズ(地元のモンタージオチーズがよい)を加えてフライパンでじっくりと焼き上げます。各家庭にそれぞれのレシピがあるといわれ、ジャガイモを生で使う、茹でてから使う、チーズも熟成のしていない、もしくは若いものを使う、熟成の異なるものを何種類が組み合わせる…など様々なフリコに出会うことができます。
トウモロコシの粉を練り上げて仕上げる同州では大変親しみのある、ポレンタを添えて食べます。

チャルソンス(Cjarsòns)

カルニア地方の郷土料理でラヴィオリに似たように薄く丸い生地に詰め物をしたパスタです。肉やチーズなどを中身の具材とし、そこにバジルやミント、マジョラム等々、ハーブの香りを組み合わせていきます。
フルーツ(乾燥フルーツ含む)を具材とした甘いものもあります。

オルゾ・エ・ファジョーリ (Orzo e fagioli)

野菜とオルゾ(大麦)のたっぷり入った具だくさんのミネストラ(スープ)です。スープとはいえ、具材がたっぷりなので、スープというよりは煮込みのような感覚でしょうか。
たっぷりの具材をしっかりと煮込んで体にも優しい郷土料理です。

リゾット・コン・スクロピト (Risotto con lo sclopit)

春の野草を具材にしたリゾットです。「スクロピト(Sclopit)」とは、春先に芽を出す野草です。呼び名はフリウリ風で、ヴェネトではカルレッティ(Carletti)と呼びます。リゾットにしたり、フリッタータ(オムレツ)などにしても美味しいです。

ニョッキ・ディ・プルーニャ (Gnocchi di prugna)

プルーン入りのニョッキです。オーストリア色の強い料理で、甘酸っぱい料理となり、主にトリエステ方面で親しまれています。乾燥のプルーンを生地に混ぜ込み、セージで香りづけしたバターを絡めていただきます。

ピストゥンム (Pistum)

ポルデノーネ県に伝わるカブの葉のペーストのようなものです。葉は茹でて重しを置き、冬季に凍ることにより独特の味わいが出ます。これをクリスマス頃以降より使う分だけその都度取り出し、細かく切り、ポレンタ(トウモロコシの粉)とブロードを合わせたところで煮込み、塩、胡椒、ニンニクなどで味つけします。

チェヴァプチチ(Cevapcici)

スロヴェニアがオリジナルの料理です。トリエステ及びゴリツィア方面でよく食べられます。豚、牛、子羊の肉をミックスしたサルシッチャ(生ソーセージ)で、少し辛味が加わります。グリルやフライパンで焼かれ、一口分に切られて提供されます。

ブロヴァーダ(Brovada)

郷土料理としてDOP(原産地名称保護)の認定を受けている料理です。特にカルニア地方など、標高の高い高原地域で伝わる料理で、小さなカブをワインの搾りかすであるヴィナッチャ(Vinaccia)に漬け込んで発酵させた、いわゆるお漬物のような料理です。
40-60日間させ、プロヴァーダ特有の赤/紫色に色づき、発酵による酸味が出てきます。ヴィナッチャ特有のブドウからくる風味もこの料理の個性です。肉料理、それも脂の多い肉料理と相性がよいのは、それらからくる酸味が肉の脂を中和してくれるからです。定番の組み合わせはコテキーノ、ムゼットと呼ばれる豚の太い腸詰めの茹でたものの添え物として皿に盛られます。

ヨータ(Jota)

同州をスロヴェニア方面の国境近く、トリエステ周辺の料理です。クラウト(キャベツの酢漬け)とインゲン豆、ジャガイモをベースとしたミネストラで、骨付きの豚肉、コテキーノなど、豚肉を一緒に煮込むことで風味とコクを加えます。同州内の各地方で少しずつバージョンも変わり、豆の割合が多くなったり、オルゾ(大麦)が加わる、クラウトの代わりにブロヴァーダが使われる…などのレシピもあります。

グーラッシュ(Gulash/Gulyas)

グーラッシュといえば、ハンガリーがオリジナルではありますが、東欧と国境のある同州にも地元料理として根付いています。同州ならでの特徴はというと、
・仕上がりがスープ状ではなく肉の煮込みに近い仕上がりにする
・豚肉ではなく牛肉を使う
・オリジナルはパプリカで色をつけるが主にトマトを使う
等々。土地ならではのグーラッシュが存在します。

グバーナ(Gubana)

フリウリを代表するお菓子です。今や同州全域で知られていますが、オリジナルはウーディネ県のヴァッリ・デル・ナティゾーネ(Valli del Natisone)という、スロヴェニア国境に近い地区です。ナターレ(クリスマス)や結婚式などハレの日のお菓子として、この地方では欠かせないものでした。
発酵させた生地に干ブドウ、松の実、クルミなどを砂糖、グラッパで風味づけしたものを載せ、それを巻いて筒状にしたものをさらに巻いて円形にし、焼き上げます。同地区には、グバーナ専門店が点在しており、地元の人々もそれぞれに贔屓の店があります。

ストゥルッキ(Strucchi)

グバーナと同様の生地を一口大にし、さらにグバーナと同様の中身を入れて油で揚げて砂糖をまぶしたものです。この地方では昔から、祝い事の際に配られるコンフェッティ(砂糖菓子)の代わりも使われています。